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奥山 儀八郎

奥山儀八郎は、日本の近代版画史において、商業的な「広告図案」と芸術的な「創作版画」、の領域を自在に往来した稀有な絵師・版画家です。彼は創作版画に触発されながらも、卓越したデザイン感覚を武器に、大衆の目に触れるポスターやラベル、風景画の世界で膨大な足跡を残しました。
奥山のキャリアは多才を極めます。戦前はニッカウヰスキーのラベルデザインや、戦時中の宣伝ポスターなど、日本の商業デザインの黎明期を支えました。彼のデザインは、版画技法を応用したフラットで力強い色彩構成が特徴で、一目で情報を伝える「明快な美」を追求していました。
一方で、風景画家としての奥山は、日本各地の自然や名所を独自の解釈で切り取りました。彼の風景版画は、伝統的な浮世絵の情緒を継承しつつも、どこかモダンな感覚が息づいています。簡略化されたフォルムと、計算された色彩の対比によって描かれた景色は、単なる写実を超えた、清々しい空気感を湛えています。

奥山儀八郎は、版画を「高尚な純粋芸術」としてのみ捉えるのではなく、日常生活を彩る「情報」や「知識」を伝える媒体として最大限に活用した、いわば「現代の浮世絵師」でした。
奥山 儀八郎