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高橋梓 個展「部屋の外にあるものたち」

ギャラリーそうめい堂は、高橋梓の個展「部屋の外にあるものたち」を開催いたします。
高橋梓は、記憶をもとに主観的な視点をもって制作した鳥の図鑑や、近年では家具の木目、タイルや石畳、布の編み目など、日常の中で目にするものたちを観察し、組み合わせた抽象的なビジュアルの作品を制作してきました。

変化を続ける彼女の作品の根底に流れる共通したものとは、その独特な視座ではないでしょうか。彼女の作品の中には、彼女の内面と現実との間の独特な距離感があり、絵の中での視座の移ろいが見えるのです。

例えば、鳥の図鑑を制作したリトグラフの一連の作品では、一般的な図鑑のように種を認識できるすべての要素を描くことは避け、シルエットや、森のどこかにいるその気配のようなものをとらえているように思えます。それは彼女自身が実際に感じた鳥の姿であり、曖昧なその部分も含めて彼女の中に自然に立ち現れたイメージなのでしょう。家具やタイルなどの無機質なものを描く際にも、それらの物体の本質とは彼女にとって明確ではなく、「それが一体何なのか」を探り、近づき、そして出来上がったものをまた一歩引いて観察する──そのような実験的な視座の行き来が垣間見えます。

今回の展覧会名の「部屋の外にあるものたち」という言葉にも、高橋の内面とその外の世界とのわずかな断絶や、ゆるやかな行き来を見ることができるでしょう。

「作品をつくるとき、私は内省的な自分へと切り替える必要がある。自室にこもり、目の前の紙を見つめつつ手を動かしてみる。
集中するほど、周囲の現実が曖昧になっていく。一方、紙の上には景色のようなものが現れてくる。
意識からはずれて溶けていく世界へ、部屋に引きこもった観念的な私が輪郭を与えようとしているのかもしれない。それは自分の深層心理を可視化する試みのようだ。」(高橋 梓)

また、メインビジュアルとなった「窓Ⅱ」では、窓の内から外を眺めるように、窓の外側に広がる光景が描かれています。

「線の集積が気流のような牧草地のような光景を見せていくことに心地よさと安らぎを覚える。それをまるで自室から遠くを眺めるように傍観している。」(高橋 梓)

窓の枠は木製パネルの木の表面がそのまま露出しており、景色はその奥に広がっているはずですが、このパネルの上では絵は木に乗っている、つまり、こちら側に顔料が突き出ている状態です。窓の外を描く中で写し取られたのは、窓の内側──すなわち、彼女自身の内面なのかもしれません。
高橋の移ろいゆく視座に寄り添い、皆様にとって新たな発見のある展覧会となること願っています。ぜひご高覧下さい。

(メインビジュアル作品: 「窓 ll」 2024年 22.7×22.7cm ステンシル(アクリル絵具、チャコールペンシル、パステル、木製パネル))

特設サイト
 
「部屋の外にあるものたち」特設サイト

 ※会期中、展示作品をこちらのページで同時公開・販売いたします。

アーティスト
 高橋 梓(たかはし あずさ)

会場
 ギャラリーそうめい堂
 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-8 山田ビル7F

会期
 2025年3月15日(土) - 29日(土)
 11:00 - 18:30
 ※日・月・祝日 休

アーティストプロフィール
 <略歴>
2021-24 同研究室 教育研究助手
2019 東京藝術大学 大学院美術研究科 絵画専攻 版画第1研究室 修了
2017 ウィーン応用芸術大学 交換留学
     / アイルランドにてアーティストRichard Gorman氏のアシスタント
2016 東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻 卒業

<展覧会>
2023 「KWAIDAN 怪談 - ラフカディオ・ハーンとの邂逅」(小泉八雲記念館 / 島根)
2022 個展「泳ぐ庭/Floating Garden」(ギャラリーそうめい堂 / 神田)
2021 個展「高橋 梓 展」(アートゾーン神楽岡 / 京都)
    「DUB」(柳沢画廊 / 埼玉)
2020 「YAN」(SO Fine Art Editions / ダブリン、アイルランド)
    個展「かけらをあつめて」(伊勢丹浦和店)
2019 「AIRMAIL #2」
   (柳沢画廊 / 埼玉、SO Fine Art Editions
    / ダブリン、アイルランド、ASSAB ONE / ミラノ、イタリア)
2018 個展「高橋 梓 展」(アートゾーン神楽岡 / 京都)
2017 「Shotai」(SO Fine Art Editions / ダブリン、アイルランド)