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星 襄一

星襄一は、戦後の日本版画界において「樹の画家」として揺るぎない地位を築いた作家です。彼は、一貫して「樹木」という普遍的なモチーフを追い続け、木版画の可能性を独自の境地へと押し上げました。

星の作品を語る上で欠かせないのが、金箔や銀箔を用いた豪華で幻想的な背景です。彼は、伝統的な日本画の技法である箔押しを版画に取り入れ、画面全体に眩いばかりの光の層を創り出しました。その輝きの中に、細密な彫りによって一本一本の枝葉まで描き出された「樹」が屹立する姿は、まるで神話的な生命の象徴のような神々しさを放っています。

星襄一の彫刻刀は、樹木の表面的な形だけでなく、その内側に流れる生命の脈動をも刻み込んでいます。彼は、樹木を単なる風景の一部としてではなく、宇宙の心理を体現する「個」として捉えていました。特に、無数の枝が交錯し、網目状に広がる描写は、木版画特有の「彫る」という行為の集積であり、その執拗なまでの集積が、観る者に圧倒的な静謐さと力強さを同時に感じさせます。

彼の作品には、長い年月をかけて大地に根を張る大樹のような、揺るぎない信念と深い精神性が宿っています。彼の描く樹々は、季節の移ろいを超えた「永遠の命」を感じさせ、そのモダンな装飾性と深い叙情は、今なお世界中のコレクターを魅了し続けています。
星 襄一